事象と確率

野球は「確率のスポーツ」とも呼ばれるほど、数学的な要素が強い競技です。そのため、事象(じしょう)と確率(かくりつ)を理解するのにうってつけの例です。ここでは、バッター(打者)を例にして、これらの概念をわかりやすく解説します。

1. 言葉の定義:野球で例えると?

まず、数学の用語を野球のシーンに当てはめてみましょう。

  • 試行(しこう): 結果が偶然によって決まる行為を行うこと。
    • 野球では 「バッターが打席に立つこと」 です。
  • 全事象(ぜんじしょう): 起こりうるすべての結果の集まり。
    • 野球では 「ヒット、アウト、フォアボール、エラーなど、打席の結果すべて」 です。
  • 事象(じしょう): 試行の結果として起こる、特定の事柄。
    • 野球では 「ヒットを打つ」「ホームランを打つ」「三振する」 など、私たちが注目する特定の結果です。

2. 「確率」の計算:打率をイメージしよう

確率は、ある事象が起こる可能性の度合いを数値化したものです。

数学的な定義は以下のようになります(すべての結果が同様に確からしいと仮定した場合)。

$$P(A) = \frac{\text{事象Aが起こる場合の数}}{\text{起こりうるすべての場合の数}}$$

具体例:打率3割のバッター

わかりやすくするために、少し単純化して考えます。

あるバッターの過去のデータから、このバッターの実力を「打率3割(.300)」とします。

  • 試行: このバッターが1回打席に立つ。
  • 事象A: ヒットを打つ。

このバッターにとって、確率(打率)は以下のように考えられます。

「10回打席に立ったら(全事象)、統計的に3回はヒットを打つ(事象A)」

これを数式で表すとこうなります。

$$P(\text{ヒット}) = \frac{3}{10} = 0.3 \, (30\%)$$

つまり、野球の「打率」とは、過去のデータに基づいた「ヒットという事象が起こる確率」そのものです。


3. 発展:複数の事象と確率

もう少し複雑な状況(高校数学レベル)も、野球なら直感的に理解できます。

① 積事象(連続して起こる確率)

「この打率3割のバッターが、2打席連続でヒットを打つ確率は?」

それぞれの打席が独立している(前の打席の結果が次に影響しない)と仮定すると、掛け算で求められます。

$$0.3 \times 0.3 = 0.09$$

つまり、2打席連続ヒットの確率は 9% です。「猛打賞」や「連打」がいかに難しいかがわかりますね。

② 余事象(〜でない確率)

「このバッターが、ヒットを打てない(凡退する)確率は?」

「ヒットを打つ」以外のすべてを指すので、全体(1または100%)から引くことで求められます。

$$1 – 0.3 = 0.7$$

つまり、70% の確率でアウト(またはヒット以外)になります。一流選手でも、失敗する確率の方が高いのが野球というスポーツの面白いところです。


用語対照表

数学用語野球での例意味
試行打席に立つ結果を生むアクション
全事象打席結果のすべて起こりうる全パターン
事象ヒット、三振など注目している特定の結果
確率打率 (.300など)その結果が起こる割合
余事象凡退その結果が「起こらない」確率

野球で見ると、確率は単なる数字ではなく「選手の能力」や「試合の期待度」として実感できると思います。