ローレンツ曲線

ローレンツ曲線とは?

ローレンツ曲線は、「世の中の『格差』や『偏り』をひと目で把握したい時」に使われます。

具体的にどのようなシーンで使われるのか、代表的な例を挙げます。

1. 経済・社会の分析

国や地域ごとの「貧富の差」を分析するために使われます。

  • 所得格差の確認: 国民の所得が平等に分配されているか、一部の富裕層に富が集中しているかを見ます。
  • 資産の不平等の分析: 貯蓄や土地などの資産が、どの程度偏って所有されているかを確認します。

ポイント: 曲線が「右下」にたるんでいればいるほど、格差が大きいことを意味します。

2. ビジネス・マーケティング分析

「売上の偏り」や「顧客の重要度」を分析し、戦略を立てる際にも非常によく使われます。

  • ABC分析(在庫管理・売上分析):
    • 「売上の80%を作っているのは、全商品のうち上位20%のアイテムだ」といった傾向(パレートの法則)を可視化します。
    • これにより、「どの商品を重点的に管理すべきか(Aランク商品)」を決定します。
  • 顧客ロイヤルティの分析:
    • 一部の優良顧客が全体の利益の大部分をもたらしている場合、その層を特定して特別待遇をするなどの施策に使います。

グラフの簡単な見方

ローレンツ曲線を見る際は、以下の2つの線の「隙間」に注目します。

  1. 完全平等線(45度の直線): 全員が同じ金額を持っている状態(理想)。
  2. ローレンツ曲線(実際のカーブ): 実際のデータの分布。

この直線と曲線の間の面積(三日月のような形の部分)が広いほど、「格差や偏りが大きい」ということになります。 この面積の広さを数値化したものが、ニュースなどでよく聞く「ジニ係数」です。

1. グラフの仕組み(どう見るの?)

正方形のグラフの中に、2本の線を引いて比較します。

  • 横軸: 人数の累積(所得の低い人から順に並べた%)
  • 縦軸: 所得の累積(その人たちが全体の所得の何%を持っているか)

グラフの中には、以下の2つの線が登場します。

  1. 完全平等線(45度の直線):
    • 「10%の人が10%の富を持ち、50%の人が50%の富を持つ」という、完全に平等な状態を表す理想の線です。
  2. ローレンツ曲線(実際のカーブ):
    • 実際のデータをプロットした線です。現実には格差があるため、この線は必ず右下の方にたるんだ弓のような形になります。

2. 何がわかるの?

「線と線の隙間(面積)」に注目してください。

  • 隙間が狭い(直線に近い): 格差が小さい(みんなが同じくらいの給料をもらっている)。
  • 隙間が広い(大きくたるんでいる): 格差が大きい(一部のお金持ちが富を独占している)。

3. 「ジニ係数」との関係

ニュースなどでよく聞く「ジニ係数」は、このローレンツ曲線をもとに計算された数字です。

  • 完全平等線とローレンツ曲線の間の「三日月型の面積」を数値化したものがジニ係数です。
  • 0に近いほど平等、1に近いほど不平等を表します。
  • ローレンツ曲線 = 格差を「図(グラフ)」で見たもの。
  • ジニ係数 = 格差を「数字」で表したもの。

⚾ プロ野球の打点データで見る「ローレンツ曲線」と「主力依存度」

このデータは、2025年の読売ジャイアンツにおける選手ごとの打点の一覧です。ローレンツ曲線やパレート図を用いることで、「チームが特定の選手にどれだけ依存しているか」を視覚的に把握していきたいと思います。

選手打点
キャベッジ51
岡本 和真49
泉口 友汰39
岸田 行倫39
リチャード39
吉川 尚輝32
中山 礼都32
丸 佳浩26
坂本 勇人22
増田 陸21
甲斐 拓也20
若林 楽人16
佐々木 俊輔10
大城 卓三10
ヘルナンデス8
浅野 翔吾8
オコエ 瑠偉5
門脇 誠4
浦田 俊輔4
山﨑 伊織3
赤星 優志2
岡田 悠希2
山瀬 慎之助2
荒巻 悠1
井上 温大1
小林 誠司1
石川 達也1

1. ローレンツ曲線で見る「打点の格差」

ローレンツ曲線は、「格差」を視覚的に示すグラフです。

📈 グラフの見方(画像②:選手打点分布のローレンツ曲線)

項目内容
横軸選手の累積比率(打点の少ない選手から順に並べた割合)
縦軸打点の累積比率(その選手までの打点が全体の何%を占めるか)
赤の点線完全平等線(45度の直線)。全選手が同じ打点を稼いだ場合の理想形。
青の実線ローレンツ曲線。実際の打点データに基づいて描かれた線。

この曲線を見ると、青い実線が赤の点線から大きく離れて右下にたるんでいます。これは、「ごく一部の選手がチーム全体の打点の大きな割合を稼いでいる」という打点における格差(偏り)が存在することを示しています。

🔢 ジニ係数 (Gini = 0.523) の意味

ローレンツ曲線から算出されるジニ係数0.523 であることがわかります。

  • ジニ係数は 0から1 の間で示され、1に近づくほど格差が大きいことを意味します。
  • 一般的な経済指標で 0.4 を超えると「格差が大きい」と見なされることが多いため、この0.523という値は、ジャイアンツ打線において特定の選手への打点依存度が比較的高く、偏りがあることを示しています。

2. 主力依存度の解説

ローレンツ曲線の裏付けとして、以下の依存度分析から、より具体的なチーム構造が見えてきます。

分析項目結果意味する内容
トップ3依存度 (CR3)31.0%キャベッジ、岡本和真、泉口友汰の3名だけで、チーム打点全体の約3分の1を占めています。
上位20%選手の貢献度55.6%全27選手のうち上位約6名の選手が、チーム打点の半分以上を稼いでいます。
打点80%ラインの人数11名打点の8割を稼ぐのに、上位から数えて11名の選手が必要でした。

この結果から、チームの得点源は少数の主力選手に集中しているものの、8割の打点を稼ぐのに比較的多くの選手(11名)が必要であることから、特定の数人に極端に依存しすぎてはいないようです。


3. パレート図とローレンツ曲線の違いと使い分け

これはパレート図であり、ローレンツ曲線と同じデータを使っていますが、表現方法と用途が異なりますので、その違いを記載します。

パレート図

特徴用途・使い分け
棒グラフと折れ線グラフの組み合わせ「要素ごとの貢献度」を把握するのに優れています。
棒グラフ(左軸)選手ごとの打点(絶対値)を示します。
折れ線グラフ(右軸)打点の累積比率(累積貢献度)を示します。
使い分け「誰がどれだけ貢献したか」を選手名と共に明確に把握したいときや、パレートの法則(20:80の法則)が成り立っているかを簡単に確認したいときに使われます。

ローレンツ曲線

特徴用途・使い分け
45度線との比較「全体的な格差の大きさ」を把握するのに優れています。
視覚的曲線がどの程度たるんでいるかで、格差の度合いを直感的に捉えられます。
数値的ジニ係数を算出し、過去のチームや他球団との「格差の比較」を行いたいときに使われます。
使い分け個々の選手名よりも、チーム構造の「偏り」を客観的な指標(ジニ係数)で比較・評価したいときに使われます。

📝 まとめ

  • パレート図:「この選手がどれだけ重要か」を個別に特定する。
  • ローレンツ曲線:「チーム全体にどれだけ偏りがあるか」を数値(ジニ係数)で比較する。