「加法定理(足し算)」が「または」の確率だったのに対し、「乗法定理(じょうほうていり)」は「かつ(AND)」の確率、つまり「連続して起こる確率」を計算するルールです。
野球で言えば、「打線がつながる確率」を計算するのが乗法定理です。前回の「条件付き確率」の式を変形するだけで導き出せます。
1. 公式:条件付き確率からの変形
条件付き確率の式を思い出してください。
$$P(B|A) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)}$$
この式の分母 \(P(A)\) を左辺に移動させる(両辺にかける)と、乗法定理の式になります。
$$P(A \cap B) = P(A) \times P(B|A)$$
これを言葉にするとこうなります。
「AとBが連続して起こる確率」 = 「Aが起こる確率」 × 「Aが起きた状況での、Bの確率」
2. 野球での具体例:先制点のチャンスメイク
試合の初回、1番バッターと2番バッターの攻撃で考えてみましょう。
「1番が出塁して、かつ、2番がヒットを打つ」確率を求めます。
- 事象A(第1段階): 1番バッターが出塁する。
- このバッターの出塁率を 4割 (0.4) とします。
- 事象B(第2段階): 2番バッターがヒットを打つ。
- このバッターの通常打率は3割ですが、「ノーアウト1塁(Aが起きた状況)」だと、右打ちを意識したりして打率が変わるとします。
- ここでは、ランナーがいると燃えるタイプで、条件付き確率 \(P(B|A)\) が 5割 (0.5) だとします。
では、この攻撃が成功する確率は?
$$P(A \cap B) = 0.4 \times 0.5 = 0.2$$
つまり、20% の確率で「ノーアウト1, 2塁(または1, 3塁)」のチャンスが作れるということです。
3. 重要なポイント:事象が「独立」しているかどうか
乗法定理を使うとき、野球では「前の結果が次に影響するか?」が非常に重要になります。
パターン①:影響する場合(従属事象)
上記の例のように、「ランナーが出ると、次の打者の心理や相手投手の配球が変わる」場合です。
このときは、きちんと条件付き確率(\(P(B|A)\))を掛ける必要があります。
パターン②:影響しない場合(独立事象)
もし、「前の打者がどうなろうと、次の打者の打つ確率は変わらない」と仮定できるなら、話は単純になります。
条件付き確率 \(P(B|A)\) は、普通の確率 \(P(B)\) と同じになるので、単純な掛け算になります。
$$P(A \cap B) = P(A) \times P(B)$$
例:2者連続ホームランの確率
お互いに全く影響を受けないと仮定した場合:
- 1番のHR率 (0.1) \(\times\) 2番のHR率 (0.1) = 0.01 (1%)
打線の「つながり」を数値化する
| 定理 | 野球でのイメージ | キーワード | 計算式 |
| 加法定理 | 代打の選択肢 (A選手またはB選手が打つ) | または (OR) | 足し算 (+) |
| 乗法定理 | 打線のつながり (Aが出塁し、そしてBが打つ) | かつ (AND) 連続して | 掛け算 (\(\times\)) |